平成15年度はドイツ連邦共和国のニーダーザクセン州およびベルリン州の各政府ならびにオーストリアの連邦政府に焦点を絞って調査を実施した。また、文献を使用して事実関係を確認するとともに、理論的背景を整理した。新たな知見の概要は次の通り。 (1)ドイツの高等教育制度は国立大学中心であるが、近年私立大学の機関数が微増している。しかし、その多くが小規模であるので、在学者数に着目すると依然として国立大学が中心となっているといってよい。ただし、公設民営型の機関が存在することは、今後の研究において注目していく必要がある。 (2)ニーダーザクセン州ではこれまでに国立6大学が財団型大学へと転換した。財務に関する権限の多くが大学に委譲されたので、州レベルの決定事項が縮小した。財団型大学の職員の身分が一部変更になることが議論になったけれども、当局者は新たな雇用関係がBATの範囲内なので問題ないと考えている。 (3)ベルリン州では実験条項を活用して、高等教育法を改正する法案を起草した。この法案は第三者機関のベンチマークにより高く評価されたものの、州議会における会派の対立のために、まだ成立していない。 (4)オーストリアは大学法が改正されて、総合大学の分割が実施された。当局者はニーダーザクセン州の国立財団型大学がかかえる問題点をかなり克服していると自信をみせてはいるが、まだ新大学法の全面実施に至る途中であるために、政府と大学の関係が具体的に確定するまで評価は困難であると思われる。
|