研究概要 |
本年度の研究においては,日本と米国における総合児童支援政策の現状について比較分析のための総括を行った上で,英国における総合児童支援政策の背景と現状に関する理論的検討に着手し,また,米国における政策展開の実態についての調査旅行(学校・教委・研究機関)を遂行している。 日本の動向については学校一地域間関係の再編を鍵概念として,学校を地域に開く中で,各種機関の連携が見られる状況に関する実証的検討を行った。米国に関しては,わが国の地方公共団体における首長部局の主導による教育行政の総合行政化の動向と照らしつつ,政策理念の位相で,消極的なリスク対処ではなく,諸個人のニーズと潜在能力に応じた能力開発と自己実現を目指し,学校改善と地域発展を連動させる点で評価されるが,諸機関同士の水平的連携と,首長部局と諸機関という垂直的連携の接点において,児童や家庭のニーズがアカウンタビリティの追求に一元化されるというねじれが見られる点を解明した。これらを踏まえ,英国に関しても文献検討を中心に研究を進め,現政権下で展開されるinter-agency workと呼ばれる一連の改革動向の理論的基盤に焦点を当てた結果,これらの動向が「新たな知的福祉国家」の核心に位置づけられ,社会正義,エンパワーメント,新たな専門性の3つの概念を軸として展開されることが判明した。米国調査では,ミネソタ州における学校を基盤とする家庭サポートの現状と課題に焦点を当てて,個々の学校で展開される施策について,ヒアリング調査および資料収集を遂行した。 以上の諸点を中心として,学会における研究成果発表(日本教育学会,日本教育制度学会)および学術論文の作成を行った。
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