本研究はアメリカ合衆国の州高等教育財政制度に注目し、(1)州高等教育財政の理念、(2)州高等教育財政制度(大学等への経常費・資本的経費の機関援助、奨学金・減税措置等を通じた学生・保護者への援助、高等教育委員会予算等)の概要と予算過程、(3)州高等教育予算の配分額算定方法(機関援助の経常費についてはフォーミュラ予算、業績予算等の予算編成モデルからみた各州方式の特徴、学生援助については給費・ローン)、(4)個別大学における予算過程、(5)州高等教育財政の評価(高等教育機会の保障、教育・研究の質的向上)について検討を行うことを目的としている。 今年度は、初年度に産前・産後・育児休暇取得のため次年度に延期した研究計画分を実施した。具体的には、初年度に収集した州高等教育財政に関する一次資料と先行研究を整理するとともに、事例研究としてカリフォルニア州を取り上げ、カリフォルニア大学の訪問調査を行った。カリフォルニア大学本部財務部では、カリフォルニア大学の予算編成、カリフォルニア大学に対する州交付金の配分方式、業績予算の導入とその後の経過について詳細な調査を行った。カリフォルニア州では1995年に州と大学との問で予算配分と中期目標に関する協定である「コンパクト」が策定され、その後数度の変更を経て、現在に至っている。これは、4年間にわたって州の予算措置を保障するかわりに、大学に対して教育・研究・社会サービスの成果を求めるものである。言い換えれば一種の業績予算の導入であるが、厳密にはBurke(2002)が指摘する(1)業績報告(Performance Reporting)、(2)業績予算(Performance Budgeting)、(3)業績ファンディング(Performance Funding)のうち(2)にあたる。つまり、報告された成果を次期の予算編成で一要素として考慮するものであり、(3)のようにダイレクトに予算配分と結びつくものではない。今回の調査では、コンパクトにおいて求められた成果が予算編成においてどのように評価されたのか、また、コンパクトの期間中に州交付金は協定どおりに配分されたのか、などについて調査を行った。 以上の調査内容は平成17年度に学会発表及び学会誌投稿を行う予定である。
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