今年度は、J.-J.ルソー、J.H.ペスタロッチ、F.W.A.フレーベル、J.F.ヘルバルトなど、18世紀から19世紀にかけて活躍した近代教育学の代表的な思想家について、彼らの教育思想および関連する史資料(和文・欧文双方を含む)を収集するとともに、それらの文献・史資料をもとにテキスト分析を行った。この成果は、来年度初期にまとめる予定である。 また、2004年1月に渡航したドイツにおいて、歴史的教育人間学に関する最新の著書および論文を収集した。これらの講読と分析は、来年度の課題である。 さらに、近代以前の教育思想における<自律性>概念の内実および<他者性>概念の位置づけに関する考察も進めた。考察に際しては、精神的な修養と身体的な習練とを関連づけて捉え、かつ、その修養・習練の過程を習う者の年齢や成長の程度などに即して体系的に論じている世阿弥の稽古論を手がかりとした。この考察から、子どもが自律的な主体へと成長するためには「他者」という契機が必要なこと、また、子どもの成長の段階に応じて必要とされる「他者」が異なることが導出された。そして、「他者」とは具体的にどのような存在をさすのか、また、その「他者」を具体的にどのようにして教育実践場面に位置づけるかが、今後の課題として指摘された。研究成果としては、教育思想史学会紀要『近代教育フォーラム』第12号に掲載された論文「『非有』という視座」(2003年9月)と、日本体育学会第54回大会体育原理シンポジウムBにおける口頭発表「マナーの教育論-『まなび』と-『まねび』を中心に-」(2003年9月)がある。
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