今年度は、国内に存在する<自律性>および<他者性>概念の成立と展開に関連する文献・資史料を、教育学を中心に哲学・社会学の領域にも目を配りながら収集した。現在、国内研究者5名のレビューを受けつつ、それらの分析考察を進めているところである。加えて、昨年度に海外で収集してきた歴史的教育人間学研究に関連する文献を講読し、それを通して研究方法に関する吟味も並行して行っている。 また、昨年度の研究実績報告のなかで、「他者」を子どもが自律的な主体へと成長するための必要不可欠な契機として位置づけ、教育実践場面に現れる「他者」の分析の必要性を指摘した。今年度は、引き続き、<自律性>および<他者性>が教育実践場面では具体的にどのような現象として生起するのか、またその際いかなる理論的・実践的問題が附随するのか、について検討した。その結果、教育実践場面では豊かな意味を生み出している<他者>が、教育学の領域における実践研究・理論研究いずれにおいても十分に考慮されてはいないこと、また、それが近代以降の教育に特徴的な<自律性>の重視・強調と密接に関連していることが、あらためて明らかにされた。研究成果としては、「マナー教育における<教える-教えられる>関係に関する考察--自律的な身体の形成に向けて--」(『体育原理研究 第34号』、日本体育学会・体育原理専門分科会、2004年、27-36頁)および「教育における自律性」(田井康雄編著『探究・教育原論』、学術図書出版、2005年4月出版予定・印刷中)がある。
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