近年、青少年の凶悪な犯罪や自殺が社会問題となるに従い、いのちの教育の重要性が指摘され、少しずつではあるが、実践もされるようになってきている。しかし、いのちをめぐる教育は、青少年期に至り、突如として始められるべきものではなく、誕生と共に始められるべきであり、そのため乳幼児期からの人生の生と死を視野に入れた教育が重要である。その方法を明らかにすることをめざした本研究の目的に照らし今年度は、 1、人間の発達段階とそれに伴う生と死の受け入れ方を、特に臨床心理学分野の先行研究により、検討することをおこなった。その結果(1)死の受け入れには発達段階による相違がありそれを熟知しなければならないこと、(2)そして死を隠蔽してはならず子どもと対話が重要であることが指摘された。しかし日本の今日の状況は死は日常の生活実感からは程遠くバーチャルな死ばかりが氾濫している。この状況は根が深く、子どもと死を見つめつつ生の重さを語り実感させるべき大人が、死について語るべき内容や言葉を持ち合わせていないという問題を内包している。これは今日の日本が抱える大きな文化の問題でもある。 2、この問題を解決し乳幼児期から子どもと死を含んだ生の重要性を内包させて成長することを促すためには、親や、乳幼児に携る保育者の意識に迫ることが重要であるとの認識から、親や保育者の意識調査にも力点を置くことにした。現在、質問紙法による調査を準備中であり、次年度以降調査し、文献研究とのすりあわせを行う予定である。
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