本年度は、主に教育政策レベルにおいて教育を考える次元空間の変化の再考に重点を置き、テーマに関連する資料や先行研究文献を、国内および現地(ロンドンとエディンバラ)であらたに収集し、これまでどのように教育政策レベルで教育空間次元を捉えていたのかを整理することに努めた。また、資料収集の際には、次年度の研究のためにイギリスにおける関係諸機関でのキーパーソンについての情報を得ることができた。さらにインタビュー調査の予備調査として小学校1校を訪問し、小学校レベルにおけるEUの教育政策の認知度・取り組み状況やカリキュラムについて校長インタビューをおこなった。 以上から得た成果は次の3つである。まず、先行研究等からはイギリスにおいてもこの分野の研究成果は教育学の領域ではそれほど増えていないことである。ただ、イギリスを含むヨーロッパ諸国に研究ネットワークを作り、EUの資金を得て調査研究を行い、成果を出版物等で公表しているグループもある。次に、シチズンシップ教育の導入にEuropean Citizenshipがどの程度重きを置かれているかについては、個々の学校または教師の実践に委ねられているように思われることである。この点は次年度以降さらに詳しく追究する計画である。3つめは、政府文書等においてEuropean Dimensionが、InternationalやGlobal Dimensionに置き換わりつつある傾向はここ数年やはり続いていることである。これらの成果に加えて、イギリス以外のEU加盟国を研究対象とする国内の研究者と、比較の視点から互いに示唆を受け合うために意見交換をおこない、EUと教育の研究ネットワークを立ち上げることができた。このことによる今後の研究の展開が期待できる。 なお、本年度の研究成果発表については、現在、論文投稿準備中である。
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