研究概要 |
本年度は,主にEUの教育政策動向と研究課題に関連するスコットランドの学校カリキュラムにおけるテキストブックの考察に重点を置いた。それらに関する資料(テキストブック等を含む)や先行研究文献を,国内および現地(ロンドンとエディンバラ)であらたに収集した。また,EUの教育政策動向研究にあたっては,初年度に国内で立ち上げたEUと教育の研究ネットワークを活用することができた。現在の研究成果は以下の通りである。 (1)EUの教育政策動向から EUの教育の鍵概念の1つ,European Dimensionの実際の展開は高等教育分野での動きが従来から大きかった。2000年以降の教育政策動向をみると,重点は高等教育分野に加えて生涯学習に置かれるようになっている。それは,EUが提供する教育領域のプログラム(ソクラテス:初等・中等教育から高等教育,成人教育,言語学習,情報教育等の分野を含み,現在2000-2006年の第2次実施期)の2007年以降の計画案でも生涯学習分野での統合プログラムが案出されていることにもみることができる。本研究課題に関連する初等・中等教育分野では,現在主にパートナー校との交流事業に重点が置かれているが,この生涯学習分野の統合プログラム化で,今後,実際にどのような展開になるのかに注目する必要がある。 (2)テキストブックの考察から スコットランドの中等教育段階の学校で使用されるテキストブック(European Studies, Modern Studiesなど)において,EUやヨーロッパ統合を直接的に取り扱っている部分は多くはない。また,該当部分はEUの組織や制度的な内容が多い。多文化社会の視点やEuropean Citizenshipの視点がまったくないわけではないが,テキストブックのみから推し量るには無理がある。次年度の研究課題として引き継ぐことにする。 なお,上記(1)については,日本教育政策学会研究年報第12号(2005年度近刊)に寄稿している。その他の研究成果発表については,.現在,論文投稿準備中である。
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