本年度の研究は、トレス海峡島嶼民に関連する地域において、学校と先住民コミュニティとの連携について調査を継続してきた。具体的には、第一にトレス海峡島嶼地域に関わる資料収集、第二にタウンズビル・木曜島におけるフィールドワークを行った。あわせて、ブリスベン・メルボルンでは、教育研究者と面談し、先住民教育の実態についてインタビューした。 資料の収集は、主にジェームズクック大学の図書館で実施した。またタウンズビル、木曜島では、学校とコミュニティの連携についてのフィールドワークを継続した。具体的なテーマとしては、学校とコミュニティ間で交わされた「チャーター」、「リテラシー教育」、「コミュニティを上台としたカリキュラム・教材」などを視点として、数校を訪問し、インタビュー調査を実施した。 また、クイーンズランド州教育省と学校、先住民コミュニティの架け橋となっている先住民教育の支援機関がケアンズにある。ここを訪問し、クイーンズランド州全体の学校と先住民コミュニティの連携についての動向などを調査した。 研究発表は、6月の日本比較教育学会で「オーストラリアにおける教育成果と社会的公正:「格差」と「差異」を視点として」、10月のキューバで開催された世界比較教育学会で"Australian Indigenous Education Policy and Social Equity"(「オーストラリア先住民を対象とした教育政策と社会的公正」)、12月にはオセアニア教育学会でrオーストラリア先住民にとって多文化社会、多文化主義とは?」を発表した。これらの発表では、コミュニティが重視している非先住民と先住民の間の文化的「差異」の尊重と公共機関が重視している基礎学力の「格差」の是正がどのように学校現場や政策上で表現され、機能しているかを考察・発表した。
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