本年度は、3年間の研究期間の初年度として、以下の実績をあげた。 (1)定量的データの収集: 大学生の批判的思考態度を測定するカリフォルニア・クリティカルシンキング・ディスポジション・インヴェントリー(CCTDI)と、相互独立的自己観と相互協調的自己観を測定する自己観尺度(SCS)を使用した定量的データを、200名ほどの調査協力者から収集した。定量的データの収集は、2004年4月以降も引き続き行い、最終的にはサンプルサイズを400名ほどにしたいと考えている。 (2)定量的データの予備的分析: CCTDIとSCSによる定量的データの予備的分析を、統計解析ソフトSASを使用して行った。その結果、当初の仮説には相反する、批判的思考態度と相互独立的自己観の統計的に有意な負の相関関係が見つかった。この相関関係は、筆者が米国の大学生を対象として行った調査とは、相反する結果であり、そこに日本とアメリカの社会的文脈の影響が介在していることが示唆される。その原因についての詳細な解明は、本研究プロジェクトで今後行う予定となっている定性的研究(面接調査)を待つこととなる。 (3)関連論文執筆: 本研究に関連する論文、「21世紀の大学教育における批判的思考教育の展望-協調型批判的思考の可能性を求めて-」を執筆した。本論文は、『青山国際政経論集』の63号(2004年3月)に掲載予定となっている。 (4)研究発表: 1月25日に立命館大学で行われた、「文化心理学と人間関係の諸相」にパネリストとして参加し、筆者の批判的思考態度研究を発表した。また、2月8日(日)に京都大学21COE「心の働きの総合的研究拠点」ワークショップの一貫として行われた「批判的思考の認知的基礎と実践」では、テーマ3の「批判的思考の教育:議論の指導」の発表において座長を務めた。
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