研究概要 |
本年度は、3年間の研究期間の2年目として、以下の実績をあげた。 (1)定量的データの分析:大学生の批判的思考態度を測定するカリフォルニア・クリティカルシンキング・ディスポジション・インヴェントリー(CCTDI)と、相互独立的自己観と相互協調的自己観を測定する自己観尺度(SCS)を使用して行った量的データの収集を終了した。最終的には、東京・京都の私立大学で学ぶ合計347名の学生からデータが集った。因子分析の結果、批判的思考態度には4つの因子があることが示唆された。これらの因子それぞれに対し.30を上回る因子負荷を持つ項目を集めると、項目間の共通テーマは、Kakai (2001)において出現した4つの因子と重複するものであることがわかった。これらの因子は、Walsh & Hardy (1997)の調査から得られた因子とも高い類似性が確認されている(Kakai, 2003)ため、本研究の最終分析においても、批判的思考態度は、CCTDIの開発者であるFacioneら(1994)の主張する7つの因子ではなく、4つの因子を用いて行うこととした。 (2)今回日本の大学生から新たに収集したデータと、筆者が米国において1999年から2000年の1年間に収集した大学生のデータを用い、4因子からなる批判的思考の因子モデルを平均構造・多母集団同時分析を用いて検証した。結果4因子の因子モデルは日米両国のデータに対し高い適合度を示し、両グループ間に同様の因子モデルがあることが確認された。 (3)上記の量的調査の分析結果を踏まえ、2004年度は、質問紙調査に参加した347名の東京・京都の大学生の中から、筆者が所属する大学の学生計17名(1年生5名、2年生6名、3年生5名、4年生1名)の協力を得て面接調査を行った。面接調査データは現在分析中である。 (4)関連論文執筆:批判的思考に関連する論文として、「ポスト論理主義モデルの批判的思考とその実現形態について:相補代替療法の使用をめぐる医療的意思決定からの考察」を執筆した。本論文は、『青山国際政経論集』の66号(2005年5月)に掲載予定となっている。 (5)研究発表:2004年9月14日の日本心理学会シンポジウム「批判的思考の心理学的基礎と実践」に参加し、筆者の批判的思考の実現形態に関する考察を発表した。
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