本年度は研究の最終年度にあたる。そこで本年度は研究の総まとめとして過去3年間の研究成果を分析し、学校・地域の相互発展的な音楽学習の状況解明、そして今後の課題を明らかにすることに焦点化し研究を行った。 研究対象の茨城県日立市では「オペラのまちづくり」の施策のもと、多くの音楽活動が展開されておりその成果も蓄積されつつあった。たとえば、地域の音楽活動者が学校にアプローチするという活動である。本研究開始時にはこれによって学校音楽教育の活性化、そしてその学習成果の地域への還元などによる相互発展性が期待された。 しかし、研究の遂行過程において年々学校が閉鎖的になり相互発展的な音楽学習は実現困難な状況にあることが明らかになってきた。その原因は音楽教育や学習の純粋な原理的問題ではない。それは近年の子どもに係る犯罪の増加から学校がセキュリティを強化したことに最大の原因があった。このような学校音楽教育の状況はあったものの、地域における音楽活動は盛んになされており、この研究期間の最大の企画は平成17年8月に行われた市民参加型野外オペラ「カルメン」である。この企画に参加した子どもを含む多く市民は、その練習過程において音楽の技能面・心情面の成果をあげていた。また、この企画終了後子ども対象のオペラワークショップが計画され、実施されている。 3年間の研究の結果、学校・地域の相互発展的な音楽学習には、学校側の様々な制約を原因とする大きな課題があることが指摘された。しかし、地域における音楽学習では子どもから大人までの柔軟で創造的な音楽学習形態の可能性が多く潜在しており、そこでの市民の音楽学習の成果としての音楽的発達が期待できると考えられた。生涯学習社会においては自由な音楽活動を学習権として保障されなくてはならない。今後、この権利を保障するためにも地域での音楽活動の可能性を追究していくことが、次の研究課題である。
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