本年度は、主として以下の三つの研究を行った。 第一に、アメリカのサービス・ラーニングやシチズンシップ教育に関する書籍・論文やホームページを調査し、サービス・ラーニングとシチズンシップがどれだけ関連づけながら論じられているかを分析した。その結果、サービス・ラーニングを分析する際に、シチズンシップの概念を強調していくことに必要性のあることが明らかとなった。サービス・ラーニングに関する文献で、シチズンシップに言及していないものはない。このことは、日本の公民教育を考えていく上で、サービス・ラーニングの考え方が示唆に富んでいるという意味でもある。 第二に、9月下旬に行ったアメリカおよびカナダの調査で、サービス・ラーニングが両国の社会科教育および公序教育の研究者の間では、シチズンシップ教育の一形態と捉えられていることが明らかとなった。サービス・ラーニングでは「若者の社会参加」を強調しているが、それは今日のシチズンシップ教育において共通に強調されているごとでもある。「行動的シチズンシップ」という概念にも多くの研究者が共感してくれ、この概念の今日的意義も再確認することができた。 第三に、静岡県内の多くの小学校・中学校を訪問する中で、サービス・ラーニングや「行動的シチズンシップ」の考え方が、社会科や総合的学習を中心に日本の学校教育にも受け入れられる可能性のあることを確信できた。浜松市与進小学校に限ちず、他の小学校・中学校においてもサービス・ラーニングを導入していこうとする動きも確認でき、来年度は学校カリキュラム開発に積極的関わっていこうと思う。
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