研究概要 |
「行動的シチズンシップ」あるいは「参加的シチズンシップ」の視点から,サービス・ラーニングの理論および実践を分析する過程で,「市民的関与」(Civic Engagement)という概念がキーとなっていることがわかった。政治学用語でもある「市民的関与」は,「行動的シチズンシップ」や「参加的シチズンシップ」と同義と解釈することができ,大学教育を中心にサービス・ラーニングの領域で盛んに議論されている。本年度は,この概念を巡る議論を,様々な政治学者の理論に基づきながら整理することにとどまったが,来年度は「市民的関与」の概念の実践化についてまとめてみたい。なお,昨年度・一昨年度とアメリカを調査訪問した際に,すでにこの「市民的関与」に基づく実践を分析する見通しを立てているので,今年度は過去2年間の調査研究を振り返りながら,最終的な結論を導き出す方向へと研究を進めていきたい。 また,日本におけるサービス・ラーニングの可能性を探る過程で,「ホームレス」の教材化についての研究も深めることができた。今年度は,ホームレスの支援活動に携わるNPO職員やボランティアから意見聴取を行った。そこから,実践可能性が高いことを確認することができたが,同時に,実践化に至るには乗り越えなければならない壁もあることを改めて知ることができた。来年度は,大学院の講義で,このホームレスの教材を進めるつもりである。そこからサービス・ラーニングの日本への導入の方策を,明らかにできるものと考える。
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