本年度は、「初等・中等教育における一貫した法教育カリキュラムの開発」のために、昨年度訪問できなかったアメリカの教材作成団体である公民教育センター(Center For Civic Education)や憲法上の諸権利財団(Constitutional Rights Foundation)を訪問し、分析対象カリキュラムの開発趣旨やアメリカ法関連教育(Law Related Education)の史的展開についてCRFのディレクターであるクラッディー(Croddy)らから聞き取りを行った。同時に日本の法教育カリキュラムの開発に有為な教材を購入した。 また国内の法教育の具体的実践(広島大学附属福山高校・千葉大学附属中学校)についても視察したり、具体的な法規範を事例にした教材開発を共同で行ったり(民法の教材化)、更に独自に実践している団体への聞き取り(日本弁護士連合会・大阪弁護士会・日本司法書士連合会)を行った。 以上の活動を踏まえ、購入した諸外国の教材の分析については社会系教科教育学会(兵庫教育大学)で諸外国の教材(カリキュラム)分析を踏まえた授業開発については全国社会科教育学会(鹿児島大学)でその研究成果を発表したところである。 本年度の研究で特に明らかになったことは、日本では主に高等学校で学習している国際法の学習についてアメリカでは所謂定義付けの学習ではなく法の影響に関する学習を行っていること。またアメリカの様々な法教育カリキュラムの分析の結果、法学習の類型において最終段階に位置付くと考えられる法批判学習を授業化するには、個や全体といった要素の「調整」に関する裁判事例や法制度を教材として用い、裁判事例や法制度を吟味・検討する中でこどもたちが個や全体の関係性を再形成することができるよう授業構成する必要があることなどである。
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