研究概要 |
平成15年度は次の3点を重点課題とした。(1)アメリカ合衆国にけるカリキュラム(例えば,各州における社会科シラバス,全米社会科教育協議会提示シラバス)に,いつ,どのように,科目「世界文化」が登場したのかの制度的成立経過の解明。(2)その成立過程にどのような教育論,教育運動,科学論,科学技術,政治体制,社会体制,などが関わってきたのかの社会的成立原因の解明。(3)成立した社会科科目「世界文化」はどのような特色,性格,学習論をもつものであったのかの教科論的成立過程の解明。また,上記の解明には,次の3点を具体的に行った。上記(1)については,アメリカ合衆国における,各時代の州教育プログラムの収集とその分析により明らかにする。上記(2)については,社会科科目「世界文化」成立期のアメリカ合衆国の社会状況に関する文献の収集とその分析により明らかにする。上記(3)については,アメリカ合衆国における,各時代の社会科「世界文化」の教科書(教師用指導書)及び「世界文化」に関連する図書の収集とその分析により明らかにする。 本年度の成果としては次の3点を指摘できる。第1の成果は,社会科科目「世界文化」や世界文化学習としての科目は1970年代の後半から1980年代前半に成立したことが明らかになった点である。第2の成果は,制度としての成立以前に,歴史(特に世界史)の改善として,政治史中心から社会史または文化史中心へという変化があったことが世界文化学習に影響していることが明らかになった点である。第3の成果は,「世界文化」や世界文化学習としての科目が多くの州においてカリキュラムに位置づき現在に至っていることが判明した点である。 これからの課題として3点を指摘する。第1の課題は1970年代のカリキュラムについて,さらに収集・分析を行い,だれが,どこで,どのように社会科科目「世界文化」をカリキュラムに位置づけるようになったのかを確定することである。第2の課題は,歴史教育における文化史の導入と世界各地域区分による編成についての考察を行うことである。第3の課題は,地理教育改革との連携がどのようにおこなわれるようになったのかを考察することである。
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