研究概要 |
平成17年度は次の3点を重点課題としした。 (1)アメリカ合衆国における社会科科目「世界文化」の成立・展開に関する体系的整理 (2)(1)の成果から,社会科世界文化学習の教科論的成立・展開に関する体系的整理 (3)(1)(2)から研究課題に対する解答の設定 3つの重点課題を解決するために次の2つの方法を用いた。 ・上記(1)(2)については,過去2年間のまとめ,及び,アメリカ合衆国における,再度の教育関係者などへの聞き取りにより明らかにする。 ・上記(3)については,学会等で成果を公表し,より合理的な結論を導き出す。 本年度の成果としては,社会科科目「世界文化」の性格が明らかになったことが指摘できる。公民権運動やベトナム戦争などにより,アメリカ合衆国は「内なる多元性」を自覚せざるを得なくなってしまったことは事実であろう。それにより,WASP文化以外の文化を学ぶ必要性を唱えてきたリベラルな側面を社会科「世界文化」あるいは世界文化学習は生かしているといえる。それは,文化相対主義の考え方を受けたものであろう。しかし,その一方で,文化の多元性の中の階層性を求めれば,それはアメリカ(その中でもとりわけWASP)の優位性を強調することとなる。アメリカ合衆国における社会科科目「世界文化」は,本来,所謂「西洋文明」だけを学習することから,それ以外の地域を学習しようというリベラルな側面を持ち得ていたといえよう。しかし,(1)その学習対象とする地域・社会・文化をどのように取り上げるのか。(2)どのようにアメリカ社会と比較するのか。(3)それらをふまえて,アメリカ社会・文化をどのように描き出すのか。(1)〜(3)によって,アメリカ合衆国における保守主義を進める科目ともなりうる性格をもっている科目である。1990年代以降のスタンダード等において明確にそのことが表れていると考えられる。
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