研究概要 |
昨年度より研究課題に関わる資料収集,すなわち,民主主義社会を生きる市民に必要な価値観形成や判断力の育成を意図したと解される社会科教育・公民教育関係の理論書,プロジェクトの報告書,ならびに,それに基づいて作成された教科書や教師用指導書についての収集を継続的に行ってきた。しかし,法関連教育等を通じて子どもの判断力を育成しようとするものについては,十分な収集ができなかったため,本年度6月に渡米し,1960年代後半から80年代にかけて開発・出版された法関連教育の理論書やプロジェクト報告書,教科書や教師用指導書のうち,未だわが国に紹介されていないもの,一部紹介はされているが国内に資料が体系的に存在しないものに重点をおき収集活動を行なった。その結果,例えば,オレゴン州弁護士協会等が中心となりカーネギー財団の支援を受けて開発されたLiberty and the Lawシリーズや,Darien A McWhirterらによって編成されたExploring The Constitution Series, Linda RiekesとSally Maheによって開発されたLaw in Action Seriesなどのプロジェクト教材を収集することができた。 これらの収集した資料や関連文献については、翻訳を進め,個々のプロジェクトがどのような目標のもとにカリキュラムや単元を構成しているか,またそこにはどのような社会認識形成の論理,判断力育成の論理が組み込まれているかを、各単元レベルでの教授・学習活動の具体的な内容・方法の分析を通して,論理実証的に解明してきた。その結果,プロジェクトは,法体系それ自体の教授を目的とするもの,市民生活に関わる限りでの法の教授をめざすもの,社会的判断力の一要素として法的判断を捉え,その育成を図ろうとするものなどに類別でき,類型ごとに内容編成の論理も異なることが明らかになった。なお,詳細については,今年6月の日本カリキュラム学会において「都市研究としての法関連教育のカリキュラム編成」のテーマで,10月の全国社会科教育学会において「法的判断力育成のためのカリキュラム編成の論理」のテーマで発表予定である。
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