研究概要 |
本研究は,芸術活動を幅広くとらえたカリキュラム開発の基本的な考え方の構築を目指すものである。研究の1,2年目は,芸術活動を幅広くとらえるために,運動=生成の視点から意味産出の構造をとらえるテクスト理論から,芸術活動の教育的意義とそのあり方について考察し,一方で,我が国の芸術にかかわる教科の教育課程の変遷の調査,分析を行う。3年目は,これら理論的研究及び教育課程の分析等を経て,カリキュラム開発の基本的な考え方を構築する予定である。初年度は,(1)テクスト理論と諸芸術の理論等の関係を整理し,(2)芸術にかかわる教科の学習指導要領の変遷について,教科の目標,内容等を調査し,整理した。前者については,性格が異なる諸芸術を一つの共通する視点から考察するために,色,かたち,音,所作などを広い意味での記号(ことば)としてとらえた。これらのさまざまな記号は言語記号とは構造を異にするが,芸術活動における記号産出のメカニズムに共通性を見出すことができる。つまり,どのような記号であれ記号は記号相互の関係性によって成り立ち,この関係性を解体構築していく過程において記号を産出していくということである(相互テクスト性)。また,この記号の解体構築の過程は自己の生成に密接にかかわっており,この意味で芸術活動には大きな教育的意義があると考えられる。今後は,この記号の解体構築の過程をどのようにカリキュラム開発において生かしていくのか考察する。一方,後者については,昭和22年から今日までの学習指導要領に示された目標及び内容について,項目ごと年代順に整理し,簡単なデータベースとして活用できるようにした。今後は学習指導要領における目標等がどのような変遷を経ているのか分析を進めていく予定である。
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