研究概要 |
本研究は,芸術的な実践を幅広くとらえ,学校教育における芸術にかかわる教科等のカリキュラム開発に関する基本的な考え方の構築を目指すものである。研究の1,2年目は,芸術的な実践の教育的意義とそのあり方について考察する一方,我が国の芸術にかかわる教科等の教育課程の変遷を調査し,整理する。3年目は,これらの理論的研究及び教育課程の分析等を経て,芸術にかかわる教科等のカリキュラム開発の基本的な考え方を構築する。 本年度は,テクスト理論等を手がかりに,学校教育における子どもの芸術的な表現の論理(同時に享受の論理)を構築する一方で,芸術にかかわる教科等の教育課程の変遷について,教育課程審議会の答申,児童・生徒指導要録から整理した(学習指導要領については昨年度整理した)。前者については,学校教育における子どもの芸術的な実践は「<いま>を生きる学び」につながるものでなければならないという前提に立ち考察した。そのため,時間に関する哲学や精神病理学を手がかりにして,時間と自己の成り立ちについて,またこれとともに,表現(=享受)する行為がいかにそれらの成り立ちにかかわるのか考察を進めた。その結果,時間=自己の成り立ちと表現する行為は,それらの根源を同じくするものであるのではないかと考えられた。そして,この場合の表現とはそのつど生まれるコトバ(音や色やかたちなど)とのやりとりを通して,その根源へと立ち戻り,また新たなコトバを生成する行為であると考えた。今後はこの考察をさらに精緻化し,整理するとともに,これまで整理してきた教育課程の変遷について,分析し,これらをもとに芸術にかかわる教科等のカリキュラム開発に関する基本的な考え方の構築を目指すこととする。
|