研究概要 |
研究初年度である本年度は,1)「精神薄弱」特殊学級関連の史資料,2)通常学級における教育観に関する史資料の収集と粗読みを行い,仮説的に以下の結果が得られた。詳細な分析・検討と仮説の検証が次年度の課題となる。 「精神薄弱」特殊学級と当時分類されている学級は,Special ClassやUngraded Classという名称で、1890年代より開設され,広がっていった。実際には,学習遅進児と精神薄弱児(魯鈍と痴愚)が主な対象であった。特殊学級の対象者は,1920年までには,教科学習の面で3年以上の遅れがみられる者が集団知能検査等でスクリーニングされ,さらに個別検査と面接で同定されるようになる。このスクリーニングでは,「精神薄弱」施設(学校)が公立学校と協働した。また知能検査実施や児童生徒の指導のノウハウは,「精神薄弱」施設(学校)が実施する教員研修によって公立学校にもたらされた。大学等での教員養成開始までの間は,「精神薄弱」教育の情報源は施設であった。義務教育ですべての子どもが学校へ通うようになると,公立学校特殊学級は「精神薄弱」者を見つけだすためのフィルターとして,また適切な教育の場として機能し,境界線児や仮性精神薄弱児にとっては,適切な進路・コースを見い出すためのハブとしても機能していた。 「精神薄弱」児に対する教育は,施設,特殊学級ともに「感覚訓練」「手工」「授産訓練」「体育(身体訓練)」等が行われた。また,通常学校の「教科学習(Grade Work)」も行われていた。ただし「教科学習」については,グレイド・カリキュラムに沿って計画された指導ではなく実用的な行動をめざしての指導であったと考えられた。施設も特殊学級も魯鈍,軽度痴愚の対象者を多く抱えており,この軽度級の対象者に対する教科学習の指導であると推測された。
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