研究概要 |
米国の公立学校特殊学級成立期における精神薄弱者施設と公立学校の協働のうち,特殊学級担当教員養成に関して施設が果たした役割を検討した。施設が,公立学校特殊学級の運営に協力し,教員の研修センターとして精神薄弱児の観察・実習の場を提供したのは,特殊学級が,施設過密のために受け入れられない学齢期の軽度精神薄弱児の教育と保護を補完する一方で,施設が,特殊学級教育後の軽度精神薄弱者のケアを補完することが前提とされたからである。施設があってこその特殊学級の役割が公認される側面が強く,両者の関係は相互補完的関係にあった。また,特殊学級の開設が,施設の教育機能とその教育の質を再考させることになり,教育畑の指導者が求められ,施設と特殊学級の教育のあり方に影響を強めてきた面があることも示唆された。 例えば,感化学校や公立学校で教師・校長の経験のあるインディアナ州立施設教育部長ジョンストンが,ヴァインランド施設の副施設長として招かれた。彼は,精神薄弱児の教育は,学科と手工訓練,体育,音楽の4つで構成されるべきであると考え,施設教員に対して,この考えに基づく教育実践を行わせるべく研修を行った。この研修が公立学校教員に開放される形で,特殊学級担当者養成プログラムが開始された。教育学者の中には,施設が教員養成の場となるべきことを強く主張する者もいた。精神薄弱児がいる場所で教員養成がされるべきことと,施設には高度な教育を受けた経験豊かな施設長と研修を積んだ献身的な教員がいることが理由であった。 この研修プログラムの修了生は,特殊学級教員として活躍し,また,地域の指導的立場に立った。例えば,ニューアークの特殊教育主事であったアンダーソンは,『公立学校における欠陥児教育』を著し,類似の養成プログラムの講師も務めた。教育畑の施設指導者と特殊学級教員の教育内容・方法に関する記述の分析・比較検討が次の作業課題である。
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