発達障害(特に、自閉性障害)を持つ人に対して、「心の理論」課題の指導を行った研究はあるが、いずれも他者の「心の理解」を教えていたのではなく、単純な時系列の弁別を教えていた可能性がある。自閉症児に「心の理解」を教える場合、他者の属性を弁別しなければならない課題を、新たに開発していく必要がある。 そこで、平成15年度においては、自閉症児における「他者理解」を促進するために必要となる支援・指導プログラムとして、「誤信課題弁別トレーニング教材開発実験用課題生成プログラム」を試作した。 「誤信課題弁別トレーニング」を行うためには、従来の固定的イベントの流れでは不十分であり、登場人物の位置や動作の順序など、環境条件がランダムに変動し、学習を繰り返すたびに、問題と解答が変化していくところが最も独創的な要点となっている。これを実現するためには、アニメーションを使った教材が最適である。しかしながら、変化の可能性に合わせてアニメーションを用意する方法では、制作経費や時間が莫大にかかってしまい、設問変更への自由度もない。 そこで、登場人物の動きを最小単位でパーツ化し、ライブラリーとして蓄積、特定のパラメータによって動的に再生させる方式を試み、上記の「課題生成プログラム」を作成した。 今回作成された「課題生成プログラム」から、弁別トレーニングのフローチャートを計画することが可能である。基本的に、計画している弁別トレーニングのフローチャートは、高次条件性弁別パラダイムに基づいている。 今後、自閉症児などの学習者がこのプログラムを通して「他者理解」を促進できるよう、弁別トレーニングのフローチャートを検討し、さらに実際に試用する予定である。
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