研究概要 |
平成12年度より参加している保育研修会、および研修会でのフィードバックの材料として実施している、気になる子どもに関するアンケート調査を行った。継続的に実施された保育研修会の成果として、保育者自身の戸惑いを伝えあう場から、実践を報告しあい、各園に見合った方策を練る場として、研修会が機能していく可能性が考えられた(矢野・青木,2003)。 以上の保育研修会の成果をふまえ、アンケートに回答された子どもの観察調査を開始した。研修会を通じて依頼のあった4園での調査を9月と翌2月、3月に実施した。アンケートへ回答された子どもを対象とし、集団場面、自由遊び場面、給食場面での行動観察、ビデオと筆記による記録を行った。観察後、保育者とミーティングを開き、実際の様子や関わりについてインタビューを行った。 9月の観察では、対象児に対する保育者による個別的関わり(声かけ、促し、身体接触等)の頻度の多さが見受けられた。関わりの目的として、集団から外れるのを制すこと、活動の流れに乗るのを促すことが考えられた。保育者が「気になる子」と認識することにより、関わる頻度が多くなる、あるいは関わる頻度が多くなることで「気になる子」として認識される傾向が考えられた。2月、3月の観察では、様子が好転している事例が複数見受けられた。実際の観察からは、表情の豊かさや子ども同士での関わりの増加、保育者による個別的関わりの減少が見受けられた。保育者が考える変化の解釈として、家庭環境の変化を挙げる傾向が見受けられた。しかし、外的環境のみで子どもの様子が変化したとは考えにくいと思われた。保育者が、外的環境の変化に伴う子どもの様子を日常の保育で細やかに捉えること、その中で生じている保育者の関わり方の変化など、保育者自身による対象児の捉え方の変化が、事例の好転を支えている可能性が考えられた。今後の課題として、数量的分析による子どもの変化と共に、その背景に起こっている保育者の情緒的体験を深く掘り下げていくことが挙げられる。
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