現在、障害のある児童が通常の学級で学ぶ機会が増えており、通常の学級の児童が障害について学ぶ機会を設定することが求められている。本研究は、小学校の「総合的な学習の時間」において、障害理解を主題とした授業を3年間展開し、(1)障害疑似体験教材の開発と効果の検討、(2)学年ごとの学習プログラム作成と検討、(3)児童の障害認識の変容に関する検討、を行うことを目的としている。 今年度は、主として上記(1)と(2)の目的に対して研究を実施した。関東地区A小学校において、第3学年では視覚障害、第4学年では聴覚障害、第5学年では車いす、第6学年では高齢者を主題とする授業を展開した。各学年の授業は、(1)障害に関する基礎知識を学ぶ、(2)十分に時間をかけて障害の疑似体験を行う、(3)障害のある人の暮らしや支援について調べ学習をする、(4)障害のある人や高齢者施設職員等に来校してもらい話を聞く、(5)体験を通して自分が何を知り、どう考えたかを発表する、の5内容で構成し、展開した。 これらの実践研究から以下のことが明らかになった。障害の疑似体験を行うことは障害に起因する不自由さや困難を理解する上で重要である。その際、十分に時間をかけ、障害のある感覚や運動機能を代行する感覚の存在、や、点字や介助機器など、さまざまな工夫や支援手段があることに児童が気づく必要がある。また、疑似体験に加えて、障害のある人に実際に会い、疑問をぶつけ、話を聞くことにより、児童の障害観がより積極的な内容のものとなると考えられる。
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