研究概要 |
当研究は、代数多様体の重要な不変量であるモチーフ的コホモロジーを、特にリーマン・ゼータ関数の一般化であるモチーフのL関数との関係において研究することを目的としている。その背景には数論におけるさまざまな予想、BSD予想、Tate予想、Beilinson予想、Bloch-加藤予想、などがあり、中心的な問題となっている。 これらは代数体(有理数体の有限次拡大)の上の多様体に関する予想であるが、今年度は主に、その局所的な研究を行った。特に、p進体(有理数体のp進的な完備化)上の虚数乗法を持つアーベル多様体のモチーフ的コホモロジーのp進的な性質について研究した(ただしpは素数)。より具体的には、次の二つの場合を研究した。 1)楕円曲線の類体論を記述するモチーフ的コホモロジー群 2)アーベル曲面のChow群(余次元2の代数的サイクルのなす群) 両者はともに、p進レギュレーター写像と呼ばれる代数的K群からエタール・コホモロジー群でへの標準的な写像の全射性(Bloch-加藤予想の類似)の問題と同値であることが分かる。 前者については、楕円曲線がある岩澤理論的な条件をみたす場合にその全射性をを示し、楕円曲線のガロア群(エタール基本群)の構造に関する新しい結果を得た。 後者については、p進Hodge理論を用いたレギュレーター写像の記述を考察し、「分解可能」な元のレギュレーター関しては簡明な記述を与えた。そして、虚数乗法を持つ楕円曲線の積の場合に、全射性についての部分的な結果を得た。 当研究を進めるために国内外の学会、研究集会に参加し、専門家との交流を行った。("Motives and Homotopy Theory of Schemes",Oberwolfach,ドイツ,2004.3.14-20.など)。特に、名古屋大学の斎藤秀司氏、Andreas Langer氏、筑波大学の山崎隆雄氏らと討論を行った。
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