補助金交付期間中に行った研究は、(1)Shokurov氏の4-fold flipの存在定理の解読、および、(2)博士論文で分類した1/2-特異点を持つQ-Fano三様体にうち、主に二種のモジュライ論的記述である。 (1)については、主に平成16年度に研究を行い、Oxford大学より出版予定の本に論文が掲載される。(2)については二種のQ-Fano三様体に分けて説明する。 まず、種数8で特異点を二つ持つものXについて、平成15年度に、その上の直線のパラメーター空間として種数4の曲線が、また、二次曲線のパラメーター空間として三次曲面が現れることを示した。ただし、ここで現れる種数4の曲線のモジュライ数は8で、種数4の曲線全体のモジュライ数より1小さい。この種数4の曲線の特殊性に疑問を抱いていたが、平成17年8月に、種数4の一般の曲線が直線のパラメーター空間として現れる弱Fano三様体の族を発見した。また、種数4の曲線で唯一つの射影直線への三重被覆を持つものに対応するQ-Fano三様体もあわせて発見した。これによって、今後、種数4の曲線のモジュライ空間の研究にQ-Fano三様体が役立つことが期待される。ただし、本来は種数4の曲線と三次曲面を使ってXをモジュライ論的に記述するのが目的であるが、それについては、X自身ではないものの、Xの具体的な双有理モデルなら記述できることが分かった。以上はウディネ大学のフランチェスコ・ズッコーニ氏との共同研究である。 次に種数6で特異点を一つ持つもののうち有理的なものXについて調べた。この研究は、平成17年10月にアメリカのJohns Hopkins大学に一ヶ月滞在中に開始したものである。このXは、具体的な有理写像でもって、三次元非特異二次超曲面をその上の非特異で種数6の曲線Cでブローアップしたものと双有理同値である。分かったことは次のことである。XはC上の階数2の安定ベクトル束Fから回復する。ここで、Fは、付随する射影直線束P(F)がX上の5/2-曲線をパラメトライズするようなものである。さらに、XのGorenstein modelを含むような有理的4-foldをC上のベクトル束のモジュライとして実現することにほぼ成功した。
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