研究概要 |
遠アーベル幾何と圏論による、Diophantus幾何への新しいアプローチをここ数年手掛けているが、16年度に入ってこの試みは大きく前進した。特筆すべき研究成果として次のようなものが挙げられる: 1 グラフ理論に関係する遠アーベル幾何、古典的なTeichmuller理論やArakelov理論の圏論的な定式化、それからある特別な条件を満たすBelyi射について様々な新しい結果を示し、計5篇の論文にまとめた。これらの研究成果は、上述のアプローチを具体化する上で必要な「数学的インフラ」でもあり、また独立な結果としても十分興味が持てるものである。 2 上述のアプローチとは直接関係がないものの、以前から考えていた有限体上のproperな双曲的曲線に対するGrothendieck予想の証明を完成し、論文にまとめた。また、その証明の中で用いた手法が、p進局所体上の双曲的曲線に対する「Grothendieck予想の絶対版」を示す上でも役立つことに気付き、この類いの「絶対版」としてははじめてどなる「強い意味でのGrothendieck予想型」の定理を証明し、論文にまとめた。 3 上述のDiophantus幾何への新しいアプローチを実現する上で鍵(のひとつ)となる「収束議論」を、2の「絶対版」を応用するような形で大きく進展させることができた。 4 1,2,3の研究成果をインターネット上で公開し、また16年度の秋に数理研で開かれた、国際シンポジウムでも口頭で発表した。
|