研究概要 |
今年度は、次数2のジーゲル保型形式に対するフーリエ・ヤコビ展開の定式化の予備研究として、関連する一般球関数に対する類似研究を行い、二つの結果を得た。一つは、次数3の実シンプレクティック群Sp(3,R)の第2ヤコビ型放物部分群から誘導された主系列表現に対するホイッタカー模型の第2種球関数についての結果であり、もう一つは次数2の実シンプレクティック群Sp(2,R)のヤコビ型放物部分群から誘導された主系列表現に対するジーゲルホイッタカー模型からホイッタカー模型への合流の記述についての結果である。 フーリエ・ヤコビ展開の定式化に必要である特殊関数はフーリエ・ヤコビ型球関数と呼ばれる一般球関数である。これまでの研究でその明示公式をほとんどの許容表現に対して決定してきたが、重要な許容表現のひとつであるジーゲル放物部分群から誘導された主系列表現の場合が依然残されており、フーリエ・ヤコビ型球関数の理論は未完である。この残された場合の明示公式を得ることは非常に複雑であり、今年度の類似研究はその予備研究として意義がある。今年度は、次数が2および3のシンプレクティック群上定義される類似の球関数についてより詳細な研究を行い、新しい知見を得た。すなわち、球関数がΓ級数でない超幾何型級数として得られること、および異なる球関数の間に存在する変形過程について、示すことができた。この類似研究を更に推進し、増大度との関係や行列係数との合流を調べることは今後の課題であり、その期待される成果はフーリエ・ヤコビ展開の定式化の問題の考察に役に立つと思われる。
|