研究概要 |
Gross-Prasad予想の研究を行った。これはSO(n)上の保型形式のSO(n-1)上の周期積分とL関数の特殊値に関する予想で、緩増加な保型表現に対して定式化されている。前年度、緩増加ではない保型表現に対し、n=5,6の場合に周期積分の計算を行った。池田保氏(京都大)との共同研究において、この計算結果を詳しく分析し、大域的な場合のGross-Prasad予想を一般に定式化した。この定式化では、周期積分を周期積分の比、L関数の特殊値をL関数の比の特殊値で置き換えることが、本質的である。局所的な場合の予想は、不分岐の場合でも大きな困難があることが分かり、まだ定式化には至っていない。また、緩増加な保型表現に対して予想を証明するため、ユニタリ群の相対跡公式について考察を行い、実験的な計算を行った。 周期積分、特に保型形式のPetersson内積をL関数の特殊値で表す公式は、保型形式の合同関係式など、数論への応用を考える上で非常に重要である。GSp(2n)上の正則保型形式に対しては、Garrett, Boechererによって、スタンダードL関数の特殊値を用いてPetersson内積を表す公式が知られている。nが2以上の場合は非正則保型形式で数論的に非常に重要な役割を果たすものがあるが、これらのPetersson内積については、今までほとんど何も知られていなかった。今年度の研究において、n=2の場合に対して考察を始め、ある種の非正則保型形式のPetersson内積を、アジョイントL関数の特殊値を用いて表す公式を証明した。この結果は、古澤・Shalikaによる相対跡公式を組み合わせると、吉田によるアジョイントL関数の特殊値のモチーフを用いた解釈とも整合することが分かった。
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