研究概要 |
今年度はGreenberg, Gillardによって証明されている実アーベル体の類数公式の拡張を行った.Kを実アーベル体とし,固定した奇素数pに対し,円分Z_p拡大K_∞/Kにおけるn番目の中間体をK_nで表わし,K_nにおけるイデアル類群,単数群,円単数群のp進完備化をそれぞれA_n,E_n,C_nと書き,これらを群環Z_p[Gal(K/Q)]上の加群とみなす.χをGal(K/Q)の指標とし,Z_p[Gal(K/Q)]加群Mに対し,そのχ部分をM(χ)で表わす.ここでKの拡大次数がpで割り切れないときにはχ部分M(χ)はMの直和因子になることに注意しておく.このとき,Greenberg, GillardはKの拡大次数がpで割り切れないという仮定の下で,すべてのnに対し,A_n(χ)の位数#A_n(χ)はE_n(χ)のC_n(χ)による指数[E_n(χ):C_n(χ)]と一致するという類数公式を証明している.今回,Kの拡大次数がpで割り切れる場合に#A_n(χ)と[E_n(χ):C_n(χ)]との間の関係を考察した.得られた結果はKの拡大次数に関する仮定なしにすべてのnに対し,#A_n(χ)は[E_n(χ):C_n(χ)]で割り切れ,その商#A_n(χ)/[E_n(χ):C_n(χ)]はKに付随した具体的に記述できるある量を越えないというものである.さらにA_n(χ)の位数がnによらず有界であるならば,十分大きいnに対し,#A_n(χ)と[E_n(χ):C_n(χ)]は一致するということも証明した.なお,A_n(χ)の位数の有界性は予想されている事柄である(Greenberg予想と呼ばれている).
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