概均質ベクトル空間のゼータ関数(とりわけ相対不変式が2元3次形式の判別式を経由して得られる空間のゼータ関数)についての研究と、多重ゼータ関数ならびに多重ベルヌーイ数についての研究を行った。 まず、2元3次形式のなすゼータ関数を拡張した2変数関数を定義し、代数的および解析的な性質を調べた。2変数化した関数の2変数のなす平面を考えたとき、その原点を通るある角度の直線上で特殊化を行うと、元の2元3次形式のゼータ関数が復元されることになる。この拡張型関数を各変数のなす軸に沿って展開した係数を算出し、それらとリーマンゼータ関数やデデキントゼータ関数、例外型リー群の関係についての考察を行い、いくつかの結果を得た。これらおのおのはまだ少し細かいものであるが、今後の進展を期待するために必要ないくつかの確認事項を合格したことになる結果として意味が深い。今後この拡張型関数をさらに代数的・解析的に解析して、より一般的な情報を算出し、特殊化した場合の2元3次形式の情報抽出を行う予定である。 多重ゼータ値については、ガウスの超幾何関数の接続公式を用いての等号付き多重ゼータ値族の新しい和公式を証明した。また、荒川・金子ゼータ関数のフルビッツ型を定義して、解析接続を行い、正整数点での値をフルビッツ型多重ゼータ値で記述、負整数点での値を多重ベルヌーイ多項式によって記述するなどの結果を得た。ここで、多重ベルヌーイ多項式とは今回の研究の中で公式に定義したものであり、旧来のベルヌーイ多項式のもつ良い性質のほとんどをそのまま受け継ぐ形での格調となっている。それらのことも今年度の研究の中で導いた研究成果である。また、多重型の一般ベルヌーイ数というものをディリクレ級数に対して定義して、詳しい研究をおこない、p進あるいはC上のL関数の理論において重要な振る舞いをする一般ベルヌーイ数の多重化として位置付けた。中でも岩澤理論の導入部で重要な役割を果たす一般ベルヌーイ数の5つの定理を、多重版に拡張してとても満足できる形で得ることができた。 これらの成果の一部は近畿大学理工学部の青木貴史教授との共同研究であり、その部分はPubl.RIMS Kyoto Univ.に掲載決定された論文において公開が決まっている.またこれらの成果を導くためにいくつかの出張と数学者の招聘を行った。また各地で行われた研究集会においてこれらの成果のいくつかを口頭発表した。
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