対数的リーマン-ヒルベルト問題についての加藤和也、イリュジー、中山能力氏等の研究や、対数的ホッヂ構造の変動を係数とするコホモロジー群に関する加藤、松原利治、中山氏等の研究に触発されて、ある種の対数構造付き解析空間上の定数係数コホモロジー群上に混合ホッヂ構造を構成することに取り組んだ。これは、平成12年度に行った中山能力氏との共同研究(Mixed Hodge structures on log deformations)を、さらに一般化するものである。 スティーンブリンクが定義した「ログ・デフォメーション」という概念は、1次元単位円上の対数的スムースな射の概念を一般化したものである。そこで、高次元多重円板上の対数的スムースな射という概念を、ある種のログ・ポイント上の対数構造付き解析空間の場合へと一般化し、それをあらためて、(ログ・ポイント上の)ログ・デフォメーションと呼ぶことにした。そして、このログ・デフォメーション上の定数係数コホモロジー群に、自然な混合ホッヂ構造を構成した。 さらに、このログ・デフォメーション上の定数層に対して、従来のニアバイ・サイクル層に対応する物を定義し、その「ニアバイ・サイクル層」を係数とするコホモロジー群上に、自然な混合ホッヂ構造を構成することに成功した。これは上述の中山氏との共同研究で得られた結果の一般化であると同時に、加藤、松原、中山の結果の特別な場合の、ログ・デフォメーション上におけるアナロジーでもある。 以上の結果について、現在論文執筆中である。
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