研究概要 |
1.局所強凸な非固有アファイン超球面は,ヘッセ構造とよばれるアファイン接続とリーマン計量の組を誘導する.志磨裕彦などにより確立されてきたヘッセ幾何学の観点から,新しいアファイン微分幾何学的な対象物を見出すのは興味深い問題である. まず,もっとも単純なヘッセ構造を誘導する場合の局所強凸な非固有アファイン超球面を決定するという問題設定が自然である.これに関して,つぎの結果が得られた.ヘッセ断面曲率が一定の局所強凸な非固有アファイン超球面は,楕円型放物面(の一部)と等積アファイン合同である.非固有アファイン超球面の中で楕円型放物面を特徴付ける研究は,大域的な観点から行われてきたが,これは局所的な性質に注目して,一意性を導いている. 2.ヘッセ構造は特殊な統計構造と解釈できることに注意する.上の結果と同様な手法を用いて,適合した複素構造を持つ統計構造を誘導する超曲面について調べた.統計構造に対して,ヘッセ構造の場合と同様にして断面曲率を定めるとき,つぎの結果が得られた.適合した複素構造を持つ統計構造を誘導する超曲面は,(ヘッセ幾何学的な)断面曲率一定ならば,楕円型放物面(の一部)と等積アファイン合同である. 3.極小中心アファイン超曲面に情報幾何学的な解釈を与える研究を松添博と協力して行った.極小中心アファイン超曲面が誘導するフィッシャー計量をもつ確率分布族のベイズ統計学的な特徴を調べた.しかしながら,これらの問題は具体例の検証など今後の課題が多く残されているのが現状である.
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