研究概要 |
無限Coxeter群およびCAT(0)空間の幾何学的研究を行い、以下の2つの研究業績を得た。 1 Coxeter系から定義されるDavis-Moussong complexとよばれるCAT(0)空間のある自然なコンパクト化で付け加える「境界」とよばれる空間に関して研究を行った。以前の研究成果において、Coxeter群のCayley graphとDavis-Moussong complexの距離に関する関係を得ており、今回、その関係を用いて、Coxeter系の境界におけるdense subsetを調べた。一般に、境界におけるCoxeter群のorbitは稠密にはならないのだが、例えば、Gromovの意味でのhyperbolic群については、境界においてorbitは稠密となることが知られている。今回得た成果では、Coxeter群が代数的なある弱い条件をみたせば、hyperbolicの場合と同様に、境界においてorbitは稠密となることを示した。この成果をもとに、今後、Coxeter群の境界に関するrigidityの問題に取り組みたい。 2 CAT(0)空間に幾何的に(すなわちproper, cocompact, isometryに)群が作用するとき、その群をCAT(0)群とよぶ。本研究では、CAT(0)群が積に分解すれば、作用しているCAT(0)空間(の本質的な部分)も積に分解するというsplitting theoremを、すでに知られている定理の拡張として得た。また、この応用として、コンパクトな非負曲率をもつ空間は、基本群が積に分解すれば、その空間のあるdeformation retractは基本群に対応して積に分解するというsplitting theoremを得た。CAT(0)群によって境界の位相が決定されるとき、そのCAT(0)群をrigidとよぶ。いつCAT(0)群がrigidとなるかは未解決な問題である。CAT(0)群のrigidityの問題に関連して、このsplitting theoremから、rigidなCAT(0)群の積は、またrigidとなるという系を得ている。
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