無限Coxeter群およびCAT(0)空間の幾何学的研究を行い、以下の研究成果を得た。 (1)無限Coxeter系からDavis複体とよばれるCAT(0)空間が定義され、その境界を「Coxeter系の境界」とよぶ。Coxeter群の代数的構造によりその境界の位相が決定されるか、は未解決な問題である(幾何学的rigidityの問題)。昨年および一昨年において、Coxeter系の境界における稠密集合に関して研究成果を得ている。今年度はその拡張を与え、以前の論文で与えたあるCoxeter系の代数的な弱い条件のもとで、Coxeter系の境界上においてCoxeter群の任意の軌道が稠密になることを示した。この成果をもとに、今後は、Coxeter系の境界に関する幾何学的rigidityの問題に取り組みたい。 (2)Coxeter群はCAT(0)空間であるDavis複体に幾何学的に作用する。(1)の設定を拡張する形で、一般の群がCAT(0)空間に幾何学的に作用するとき、その境界上で群の軌道が稠密となる十分条件を与えている。この十分条件は、条件としてはまだ非常に強い条件であり、より拡張した成果が望まれる。群が既約である(すなわち、積に分解しない)場合には、境界において群の軌道が常に稠密となるのではないか、という予想を持っており、今後、取り組みたい。
|