研究概要 |
研究上の成果は大きく分けて次の3つである。(1)特異点論・平面曲線と結び目論をつなげるA'CampoのDivide Knot理論に3次元多様体論・デーン手術の視点を盛り込み、「曲線が格子から領域を切り取って得られる場合に、その領域の面積が主に例外的な手術を引き起こす手術係数と関係があること」を指摘した。この着眼点とそこから得られる種々の応用について、2つの国際集会(札幌:特異点論,ソウル:結び目理論)、埼玉大学と早稲田大学でのセミナー、京大数理研の研究集会で講演した。論文としてはProceedingsを含め4件執筆した。(2)「4次元多様体の中で、曲面に対して2重リボン変形を施してもその曲面で分岐する2重被覆空間の可微分同相類は変化しない」という結果を含む定理を証明し、論文をほぼ完成した。(3)結び目の多項式不変量と例外手術の関係について、大阪市立大学の門上晃久氏と共同研究を開始した。 研究を進めかつ発表する過程で、結び目論・低次元多様体論、特異点論と種類の異なる集会に多数出席して有意義な情報交換を得ることができた。 研究環境の整備の観点からは、過去の成果の蓄積を計算機Macintoshの新しいOSに移行する準備を整えた。これに関連して、計算機の管理のためのソフトウェアなどを購入した。これらは今後の快適な研究交流には欠かせない。上記の研究(3)では今回購入した携帯型の計算機が早速役に立った。 その他、最近出版された微分幾何学に関する洋書を数点購入し、今後の研究の発展に備えた。今後も、純粋に図形を扱うトポロジーと数式や計算を中心として考察を展開する代数幾何・特異点論との架け橋となるべく、現在の研究を発展させていきたい。
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