申請書の研究計画欄に記した内容に沿って、本研究費により、マキシム・カザリアン(ステクロフ研究所、モクスワ)、リチャード・リマーニ(ノースカロライナ大学、米国)の2研究者の招聘を行った。とくに9月に札幌で開催された日本数学会国際研究集会「特異点理論とその応用」における連続講演等を行い、さらに専門家の間での集中セミナ・討論・レビュー・共同研究の打ち合わせを行った。 当国際研究集会には「可微分写像の大域的特異点理論」に関する専門家が他にも多数の参加しており、このブランチにおいてこれほど内容の濃い集会はいままでになかったと思われる。上記2名の講演は、カザリアンは多重特異点型に対するトム多項式の理論と複素コボルディズム、リマーニはトム多項式と表現論(とくに幾何的不変式論(G.I.T.)との関係)に関する深い内容のものであり、結果、本研究の内容(下記)との関連性を強く認識することとなった。 申請書の研究目的欄に記載した「トム多項式の理論の整備」として、相対トム多項式と高次トム多項式をあげていたが、15年度は特に高次トム多項式に関して重点的に研究を行った: 1.バート・トータローによる代数群の分類空間のチャウ群の構成を元に、群作用を持つ複素代数多様体に対する"同変チャーン-シュワルツ-マクファーソン特性類"を定式化した。これはある意味で、ボレルの同変コホモロジー群の双対にあたる同変ホモロジー群(あるいは同変チャウ群)の元として定義され、とくに(群作用を持つ)非特異な多様体の場合はその接空間束の同変チャーン類の同変ポアンカレ双対に一致する。この同変チャーン類の多破にわたる応用が考えられる。 2.群作用を持つ複素アファイン空間の中の不変代数的集合に対して、その同変チャーン-シュワルツ-マクファーソン特性類は、そのアファイン空間の同変コホモロジー群、つまり分類空間のコホモロジー群の元(全コホモロジー類)を与える。これをその不変代数的集合の「セグレ-トム多項式」として定義する。これが求められていた「高次トム多項式」である。 続けて、相対版や複素曲線のモデュライ空間などへの応用を平成16年度の研究として計画している。
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