研究課題
本研究では非可換幾何学における変形量子化の果たす役割を考察し、またその応用について幾つか基本的な結果を得た。まず、通常考えられている多様体の非可換化を考える時もっとも物理的に見て自然な方法のひとつとして変形量子化が考えられるが、非可換化された後の空間の基本的な性質(コホモロジー理論、指数定理)などの研究はあまり進んでいなかった。そこで本研究ではそれらの計算、具体的な定理を得ることを目標として以下のような結果を得た。1)変形量子化の結果得られる非可換空間のコホモロジーである0次K-理論はもともとの可換な場合と変わらないが巡回理論の方は変形量子化の影響をうけること。2)非可換多様体の指数定理にはその変形をパラメトライズするコホモロジーの要素を反映させた形の公式がえられること。さらに、変形量子化された世界には*-指数関数を経由することによって自然にgerbeと呼ばれる概念が現われることなどもわかりつつある。もともとのgerbeは整数係数の3次コホモロジーの幾何学的実現であるが、それが非可換幾何と密接に関連しているということは非常に興味深いことであると思われることに加え、比較的最近Melroseらもtorsion classに対応しているgerbeに関する指数定理などを考察しているが、これらの研究と変形量子化における*-指数関数の計算はその背後で密接にかかわっていることが推察される。以上のような結果を踏まえ今後はさらに非可喚幾何学とコホモロジーの要素との関連、指数定理などを研究していきたい。
すべて 2005 その他
すべて 雑誌論文 (2件)
Non commutative geometry and Physics, World Scientific
ページ: 209-300
Progress in Mathematics (to appear)