研究概要 |
本研究の目的は,計算困難な整数計画問題に対して,主算法によるアプローチを使って,効率的な厳密解法を構築する,というものである.この目的の実現のため,本年度はまずネットワークフロー問題に対する主算法の拡張について研究を進めた.ネットワークフロー問題に対する解法の多くは,劣モジュラ流問題と呼ばれる,より一般的な問題の解法へ拡張されているが,その際のキーポイントは,ネットワークフロー問題に現れる良い組合せ構造を抽出することである.そのような良い性質をもつ組合せ的構造として,整数格子点上で定義される関数に対する概念である,M凸関数,L凸関数が近年提案された.本研究ではさらにそれらの概念を実数空間上で定義される関数へと拡張し,それらのもつ構造について組合せ的および解析的な視点から調べた. また,双対ネットワークフロー問題に対する算法の拡張についても研究を進めた.双対ネットワークフロー問題は,ネットワークフロー問題の(非線形計画問題としての)双対問題として表れる問題であり,isotone regression, dial-a-ride transit, production/inventory systemなどに応用をもつ重要な問題である.この問題に対し,様々な解法が提案されているが,双対ネットワークフロー問題とL凸関数の関係を踏まえ,既存の解法がL凸関数に対してどのように拡張可能であるか,調査を進めた.その結果,L凸関数に対する効率的な貪欲算法が得られることがわかった.また,この貧欲算法にスケーリング技法を適用可能であり,更なる高速化が可能であることもわかった.
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