研究概要 |
本年度は,正則セル複体のファセッ卜とリッジの接続グラフの非巡回的向き付けに対して,ある条件下である目的関数を最小化することの意義を,ある種の非巡回的な分割可能性を導入し,これと対応させての解釈を与えた.この非巡回的な分割可能性は,単体的複体の場合にはシェラビリティーと等価であり,一般の正則セル複体においではシェラビリティーを包含する広い概念となる.(シェラビリティーとは,単体的複体のトポロジー的組合せ論における非常に重要な概念である.)これにより,まず,単体的複体の場合のシェラビリティーを,グラフの非巡回的向き付け上の最適化問題として特徴付けることができ,さらに,立方的複体の場合には,非巡回的向き付けに対して臨界ファセットという概念を導入することにより,モースの不等式を与えることができた.また,これに関する種々の例も構築した. また,グラフの非巡回的向き付けと非常に密接な関連のある,有向マトロイドの正サーキット系とそのマイナーについての研究も行なった.本年度は,ランク2の場合の特徴付け,および,ランク3の場合の十分条件を与え,これを用いてcircurantなminimally nonideal clutterの中で,ランク3の有向マトロイドの正サーキット系として生じるものを特定した.これは組合せ最適化における重要な問題である,クラッターのパッキング・カバリングの問題と関連する. この他,埼玉大学下川氏との,3次元球面の組合せ的分割を結び目との関連で論じる研究も成果を残した.これはシェラビリティーに関する結果を,構成可能性に拡張する結果で,組合せ的分割の諸概念の性質を明らかにし,トポロジー的組合せ論における重要な成果である.
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