研究概要 |
ガウシユニタリアンサンブルの固有値のなす(有限)ランダム場のスケーリング極限としてあらわれるフェルミオン(無限)ランダム場とその一般化であるボゾンランダム場についての研究を主に行なった. 局所的トレース族に属する非負定値積分作用素に対して,フェルミオンランダム場とボゾンランダム場がそれぞれ定義され,これらはラプラス変換が特別な形のフレドホルム行列式を用いてあらわされるという性質で特徴づけられることを示した.また,ともに相関不等式が成り立つが符号の向きが逆になるということを示し,この意味で二種類のランダム場は対極にあることを示した.これらの二つのランダム場を補間するというアイディアを,ラプラス変換のレベルで1パラメーターを導入し,そのラプラス変換に対するランダム場の存在問題として試みた.結果的にはそのやり方では全パラメーターで連続的に補間することは一般には不可能であることが示されたが,その試みの過程で新たな興味深い問題を得た.それは正方行列の行列式とパーマネントと呼ばれる量を1パラメーターで補間したある特別な形の行列変数関数の正値性の問題で,任意の非負定値行列の行列式が非負であるという性質のこの行列変数関数への一般化の問題である.この正値性の問題が肯定的に解決することと,ランダム場の補間があるパラメーターの範囲で可能であることが同値となることを示した.また,このことは対称群の表現論,ヤング束の調和関数,行列値ベッセル過程などとも深いかかわりがある.
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