今年度はまず、ユークリッド空間上の拡散過程における大偏差原理の精密評価に関する研究に取り組み、グリーン作用素の微分作用素の評価に関する研究を行った。ユークリッド空間上の拡散過程に関しては、ステート空間がコンパクトではないので、トーラス上の場合とは違い、ラプラス近似を研究するために必要なグリーン作用素の微分作用素に関する評価が難しい。今年はこの研究をし、まず補間理論及びマリアバン解析を用いて、半群の微分作用素に対する評価を行った。結果として、半群の微分作要素は、xの冪と1/tの1より真に小さい冪で抑えられることを証明できた。また、これを用いて、対応するグリーン作用素の微分作用素に対する評価を与えた。(研究発表[1]を参照)。 また、量子場のラテス近似に関する研究も行った。2次元ユークリッド空間上で、Hoegh-Krohn量子場モデルにおいて、フリー項及び相互作用項が同じラテス近似により近似される場合の確率測度族の収束性がすでに知られている。しかし、それぞれ違うラテス近似により近似される場合に関してはまだ知られていなかった。今年はこれに関する研究を行った。具体的には、違うラテス近似の場合において、確率測度族の挙動を調べ、スケルトン不等式及び二点関数に対する漸近評価を示すことにより、確率測度族の収束性の証明に成功した。(研究発表[2]を参照)。さらに、$Phi_2^4$量子場モデルのラテス近似に関しても関連する研究を行った。研究発表[3]はこれに関する研究結果である。
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