1.不均質な空間でのランダムな動きのモデルとして、疑似安定過程を案出した。これは、先行する研究を拡張して、安定過程だけでなく、ブラウン運動をも包含できるようにしたものである。疑似安定過程が描く軌跡は、場所により異なるハウスドルフ次元を持つことが期待される。均質な空間では、あるパラメータ領域で確率過程としての再帰性が破れているが、疑似安定過程では、そのパラメータ領域内でも空間の遠方で再帰的パラメータに近づく場合は、再帰性を持つことを、二次元の場合に示した。この研究成果は、今年度に学術雑誌に掲載された。 2.一次元非粘性バーガース方程式に、ホワイトノイズの初期条件を正の半直線上で与え、負の半直線上にはマイナス無限大を与えた系を研究した。これは、真空に向かって放出・拡散する完全非弾性粒子のモデルになっている。本研究では、質量流の長時間漸近挙動に関する重複対数の法則と、漸近挙動に対する下級関数と上級関数の特徴づけを得た。最近この研究成果は、学術雑誌に掲載を受諾された。 3.ランダム景色のなかのランダムウォーク(=RWRS)という名前で知られている確率モデルについて、これまでの研究では軌跡の確率分布と、連続極限での特徴づけ・分布が求められていた。このRWRSの初到達時刻については、結果がまだ得られていないようなので、それを調べることを企て、有望な手法を確立することから始めた。一次元ランダムウォークの正の半直線への初到達時刻についてのSparre Andersenの定理を、二次元ランダムウォークの半無限線分への初到達時刻に対して拡張した。この研究は、現在進行中である。
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