研究概要 |
空間非一様な場におけるパルスのダイナミクスは,これまでよく知られている空間非一様な場におけるフロント波のダイナミクスと大きく異なる場合があることが本研究により明らかになった.本年度は,昨年度に得られた成果を踏まえ,それら成果を積極的に講演などを通じて発表し,他の研究者からの情報を多く得ることができた.また,成果の一部は論文としてまとめられ,現在印刷中である. また,本年度はこれまで空間一次元の問題を扱ってきたが,それを空間二次元に拡張した問題を考察した.実際の現象との対比から,問題は必然的に空間二次元,三次元となる.これまで多くなされてきた空間非一様場を考慮した反応拡散系に関する数理的な研究は,空間一次元の問題にとどまっており,空間二次元,三次元で起こりうる,より複雑な現象に関する考察はほとんど無い.実際の現象を理解する上で今後重要となるであろう,数理的な考察および現象数理学としての役割を考えると,空間二次元,および空間三次元の問題を積極的に考察することは必然である.我々は,特にミクロレベルの空間非一様性がマクロな現象を引き起こす可能性について検討し,一定の成果を得た.近年,生物の細胞レベルすなわちミクロレベルでの観察技術が向上し,ミクロレベルでの構造の特異性など多くの情報が得られている.しかしながら,ミクロレベルの非一様性がマクロレベルの現象を引き起こすそのメカニズムについては不明な点が多い.本研究は,それらの間を埋める研究の一つとして有意義なものであると言える.成果は現在執筆中の論文で発表予定である.
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