研究概要 |
生物種の侵入や伝播の現象を記述するFisher方程式において,物理的に自然なコンパクトな台を持つ初期値から出発した解のフロント波の速度は最も遅い速度で進む進行波の速度に漸近することが知られており,その意味で最小速度が最も安定な伝播の仕方と言える.最近,東京大学の俣野博氏により,空間準周期的あるいは概周期的な係数を持つ方程式に対し進行波の概念が確立され理論的な取り扱いが可能になってきている。こうした空間非一様性を持つ広いクラスの単安定型方程式もしくは燃焼方程式に対し,不安定領域へのフロント波の伝播における(最小)平均速度選択原理を明らかにし,非線形伝播現象を説明することを目的に研究を行った. 今年度は,主として空間1次元問題を取り扱った.とりわけ,空間周期的な非一様性を持つ単安定型方程式や燃焼方程式に対し,予備的な数値シミュレーションを行い,コンパクトな台を持つ初期値から出発した解が漸近するフロント波の進行速度に関する見積もりを行った.また,移流項に空間周期的な非一様性が入った場合に,進行波に収束する双安定型方程式の安定な進行波から成る劣解の列を構成し,フロント波の速度と劣解の速度との比較を数値的に行った.数値シミュレーションを通して,双安定型方程式に対しては理論的に知られているのと同様に,空間的に一様な場合より最小平均速度は遅くなる,すなわち,空間非一様性の影響により伝播は抑制されるという数値計算結果も得られた.
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