研究概要 |
反応拡散系から現れる樹状形状を研究するため,まず,結晶成長に現れる進行波解について調べた.そのため,結晶成長のモデルの一つであるアレン・カーン方程式を扱った.空間2次元における進行波解の存在およびその漸近安定性について示し,東京工業大学・谷口助教授と共著論文にまとめた.研究目的の一つである異方性を含むモデルに関しては,異方性と外力を含む曲率流モデルのV字型進行波解の存在を示した.また,異方性が強くなると,進行波解は,だんだんと折れ線に近づき,クリスタライン運動に収束することも証明した. 常微分方程式系の解は,すべて有界となるような系であるにもかかわらず,拡散項を付けた反応拡散系には,有限時間で爆発するような解が存在することを「拡散誘導爆発」という.拡散という空間均一化の効果を加えることにより,空間非一様性がどんどん大きくなり,有限時間で爆発してしまう現象であり,パターン形成との関係が深い.この現象は,一体どのような非線形性に対して起きるのか調べるために,常微分方程式系における非線形項と線形項の関係を調べた.ミネソタ大学H.Weinberger氏との共同研究により,非線形項がp次斉次式の場合に線形項が大域的挙動にどのような影響を与えるのかを調べ,論文にまとめた.斉次項をもつ常微分方程式系でも,線形項が様々な影響を与えることがわかった. 拡散だけでなく境界条件も爆発に影響を与える.M.Fila氏,J.L.Vazquez氏との共同研究により斉次ノイマン境界条件では爆発する解があるが,斉次ディリクレ境界条件では爆発しないような系の構成に成功した.
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