今年度は、マルチンゲールに対するエントロピー法の応用として、エルゴード的な拡散過程のドリフト項のパラメトリックモデルを考察した。特に、その変化点が存在するか否かを検定するための自然な検定統計量を提案し、その漸近分布が標準ブラウン運動の汎関数になることを証明した。この結果を近々学術誌に投稿する予定である。証明のポイントは2点あり、第一に主要項に対してマルチンゲール確率場の弱収束の理論を適用することである。エントロピー法はここで有用であった。第二に、剰余項が一様にゼロに収束することであるが、これを示すために一様大数の法則の一種を用意した。エントロピー法は、ここでも間接的に有用であった。この仕事の中で、オランダ王国のGill教授を訪問し、証明の一部を簡略化することができた。また、対立仮説をどう構成するかという点においても、建設的な議論ができた。
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