本年度(15年度)は、パンルヴェ超越函数に付随する線型方程式のモノドロミーの構造の研究をおこなう上で手がかりになると思われる、超幾何函数のモノドロミーの研究をおこなった。超幾何微分方程式が特異点の合流により合流型超幾何微分方程式へ退化するのはよく知られた事実であるが、函数レヴェルでこの退化を解析接続の情報までこめて厳密に計算したものは知られていない。わたしは、これを厳密に計算し、超幾何函数の接続公式の退化から自然に合流型函数の漸近展開が導かれることを示した。この結果は単著論文"Sur la d\' eg\' en\' erescence de quelques formules de connexion pour les fonctions hyperg\' eom\' etriques de Gauss"にまとめ、プレプリントはHokkaido University Preprint Series in Mathematics(http://coe.math.sci.hokudai.ac.jp/literature/preprint/index.html.ja)の613番論文として公開している。この論文は現在投稿中(査読審査中)。この結果に付随する問題として、合流型のストークス係数を、超幾何のデータから復元する問題が考えられるが、これは現在計算中。超幾何のモノドロミーから差分方程式を構成する問題については、ラムダ函数の整数冪のフーリエ係数が具体的にわかれば研究が大いに進展するはずであるが、いかんせんこのフーリエ係数を求めるのが相当難問であるため、このことに関する研究は発展途上である。 この他、客を北見によんで、上述の研究に関連する知識の説明を受けた。主なものとして、平成15年自8月9日至8月16日に保形函数楕円函数の専門家である堀江太郎(鈴鹿高専)、加納成男(名大)、坂田裕(早稲田高等学院)三氏を招き、上述のラムダ函数のフーリエ係数を算出する際の問題点につきレクチャーを受けた。また8月15日には英国ケンブリッジ大学純粋数学数理統計学科よりマルタ・マツォッコ氏が訪れ、"Isomonodromic deformation problems and Garnier Systems"の題で1時間レクチャーをおこない、上述の研究を多変数化する際の問題点を指摘した。日本人3氏には旅費を、マツォッコ氏には講演謝金をこの科研費より支出した。 図書購入については、研究に必要なものはおおむねそろえたが、一部購入を希望したにもかかわらず、出版社の都合で絶版になり入手できなかったもの、入荷が遅れ15年度以内に購入できなかったものがあった。
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