本年度(16年度)は、パンルヴェ超越函数に付随する線型方程式のモノドロミーの構造の研究をおこなう上で手がかりになると思われる、超幾何函数の古典的な諸公式をテータ函数論の立場から再検討する研究をおこなった。結果としては、超幾何函数のガウスの接続公式を、超幾何函数のヴィルティンガー積分表示を用いてテータ函数論の立場から(具体的にはヤコビの虚数変換公式、ガンマ函数の反転公式等を駆使して)別証明を与えることに成功した。この結果は、境界値を利用したガウスの第一証明および線積分の方法によるリーマンの第二証明に次ぐ本質的に新しい証明である。これによりヴィルティンガー積分の一般化などの見通しが具体的に立つことになった。この結果は単著論文"transformation relations of matrix functions associated to the hypergeometric function of Gauss under modular transformations"にまとめ、プレプリントはHokkaido University Preprint Series in Mathematics (http://coe.math.sci.hokudai.ac.jp/literature/preprint/index.html.ja)の672番論文として公開している。この論文は現在投稿中(査読審査中)。この研究については、韓国高等科学院数学部(ソウル)の招待により9月上旬に1週間ほど滞在し研究内容の発表をおこなった。また、9月下旬には北海道大学で行われた日本数学会の学会で研究発表をおこなった。図書購入については、研究に必要なものはおおむねそろえた。
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